比較文学比較文化ハンドブック

A Companion to Comparative Literature & Culture

Publications

Tsuyoshi Namigata et al. (eds)

University of Tokyo Press 東京大学出版会, 2024

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About the book: 19世紀フランスで生まれた学問「比較文学」は、130年を経て文化・芸術をも対象として発展してきた。その基本概念から最新の研究ジャンルまで幅広いテーマを解説した、比較研究の過去・現在・未来を「読む事典」であり、さまざまな書物への導きとなる一冊。

例えば夏目漱石の作品は、近代日本とか日本語だけに縛られた存在ではない。 ――(中略)―― 漱石が近代日本の急速な近代化・西欧化について思索を深めていった軌跡をたどる一方で、日本が併合した植民地に対する漱石の立ち位置はどのようであったのかを考えてみる。そんなところから、比較文化的な視野が拓けてくる。漱石は日本語でのみ著述する作家であったが、例えば彼と同時代の、日本語と韓国語の双方を用いて書いた作家を、私たちはどのように読むことができるのだろうか。このように比較文学の方法は、文学のみならず、芸術や文化を対象とする時にも応用することができる。ひいては、人間や社会が孤立し自閉した存在ではなく、様々な要素が混淆して共存する存在でもあると気づく第一歩にもなる。
本書はこうした理念にもとづいて、比較文学・比較芸術・比較文化に関して日本で初めて編まれたハンドブックである。このハンドブックは研究と読書の海に乗り出すための航海の指針であり、随伴者(コンパニオン)でもある。今回、数十名に及ぶ専門家たちがここに集結し、一般読者や初学者に向けて、さらには研究者の参照にも耐えうるように、平易で深く、読んで面白い「読む事典」にもなることを心がけて執筆した。

About the co-editor: Tsuyoshi Namigata was a HYI Visiting Scholar from 2022-23.